メトリクス

メトリクスとは、測った数値とその時刻、そして対象を表すタグを組にした計測値です。1 点ずつの記録が時間順に連なった時系列として保存され、グラフ化 / 集計 / しきい値判定のどれとも相性が良いため、システムの状態を追う監視の土台になります。

概要

メトリクスは、時刻と数値の組を時間順に並べた時系列データで、Datadog では値とタイムスタンプを持つデータポイントとして取り込まれます。ログのように出来事を 1 件ずつ残すのではなく、測った時点で数値へ丸めた形で保存するため、長い期間ぶんを安く持てて、期間や対象をまたいだ比較が速く終わります。異常の始まりを面で捉える場面、容量を見積もる場面、しきい値でアラートを出す場面のいずれでも最初に見る材料になり、原因の特定はログとトレースへ引き継ぐ、という役割分担で使う概念です。

時刻と値とタグの 3 つ組

メトリクスは、ある対象について測った 1 つの数値と、それを測った時刻を組にした記録です。Datadog はこれを値とタイムスタンプを持つデータポイントとして取り込み、同じ名前の点が時間順に連なったものを時系列として保存します (2026 年 9 月時点・出典: Metrics)。3 つ目の要素が タグ で、どのホストのどの環境で測った値かを点そのものに貼り付けておくため、あとから対象を切り替えて見比べられます。取り込みの細かい挙動として、秒未満の時刻は最も近い秒へ丸められ、同じ時刻の点が複数届いた場合は後から届いたものが前の値を上書きします。API から同じ秒に同じ名前とタグで何度送っても点は増えないので、細かく分けて測りたい値は名前かタグを変えて送る必要があります。

安く長く持てるから土台になる

メトリクスの強みは、記録の時点で数値へ丸めてあることです。1 件ずつの本文を残すログと比べて 1 点あたりの容量が小さく、同じ費用で長い期間ぶんを残せます。Datadog の Pro / Enterprise ではメトリクスの保持期間が 15 ヶ月あり (2026 年 8 月時点・出典: Datadog Pricing)、1 年前の同じ月の負荷と目の前の負荷を同じ画面に並べられます。数値なので合計や平均の計算も速く、100 台のホストを 1 本の線にまとめる、逆に 1 台ずつに割る、といった見方の切り替えがすぐ終わります。安い / 長い / 速いの 3 点がそろっているので、監視の入口はメトリクスに置くのが定石です。

ログやトレースとは答えられる問いが違う

メトリクスとログとトレースは置き換え合うものではなく、得意な問いが分かれています。メトリクスは「いつから、どのくらい悪いのか」を全体像として示し、ログは「そのとき何が起きたのか」を 1 件ずつの記録で示し、トレースは「どの処理で時間を使ったのか」を 1 リクエストの経路として示します。

信号記録の単位得意な問い費用の増え方
メトリクス時刻 + 数値 + タグ全体の傾向と異常の始まり名前とタグの組み合わせで決まる時系列の数
ログ出来事 1 件ごとの本文個別の事象の詳細と証跡取り込んだ量とインデックスした件数
トレース1 リクエストの経路遅い処理と依存関係の特定取り込んだスパンの量
出典: docs.datadoghq.com/metrics/ ほか。3 つの信号の役割を整理し、費用の列は各プロダクトの課金単位から補った

Datadog のドキュメント自身も、メトリクスで環境の健全さを一目で確かめ、問題を見つけたらログとトレースで掘り下げる、という順序を案内しています (2026 年 9 月時点)。オブザーバビリティを 3 つの信号で語るとき、メトリクスは最初に見る面の役を担います。

何をメトリクスにし、何をログに残すか

実務での線引きは、数え上げと大小の比較で答えが出るものをメトリクスに、あとから 1 件ずつ読み返したいものをログに置くことです。注文の件数 / 待ち行列の長さ / 応答時間の分布はメトリクスが向き、どの利用者のどの注文がどんな理由で失敗したのかはログが向きます。ここで気を付けたいのは、利用者 ID やリクエスト ID のように値の種類が限りなく増えるものをタグに入れないことです。名前とタグの組み合わせの数がそのまま時系列の数になるため、カスタムメトリクスの課金が跳ね上がります (この数え方は カーディナリティ を参照)。Datadog へ送る経路はインテグレーション / Agent のチェック / DogStatsD / API のいずれかで、どの経路で送っても、保存後のクエリやグラフの作り方は同じです。ただしカスタムメトリクスとして数えられるかは経路と名前で決まります (詳しくは Datadog のメトリクス)。

グラフはメトリクスそのものではない

保存されているのは点の列だけで、画面に見える線や棒は、その点を一定の時間幅ごとにまとめて描いた結果です。同じ 1 本の時系列でも、まとめ方を合計にするか平均にするか最大にするかで形が変わります。表示する期間を広げると 1 点あたりの幅も広がるため、短い期間では見えていた突出が、長い期間では平らに見えてしまうこともあります。グラフが平らだから問題ないと判断する前に、どの期間をどのまとめ方で描いた図なのかを確かめる癖をつけてください。

平均だけを見ると誰の体験でもない数字になる

もう 1 つのつまずきは、応答時間を平均だけで語ることです。9 割の利用者が 100 ミリ秒で返り、1 割が 5 秒待たされている状態でも、平均は 590 ミリ秒という穏やかな数字に収まり、実際に困っている 1 割が数字から消えます。分布を持つ値は、95 パーセンタイルや最大値と並べて見るのが基本です。Datadog では送信時に選んだメトリクスタイプによって、あとから分布を見られるかどうかが決まります。平均しか出せない形で送ってしまう前に、その値を将来どう眺めたいかを決めておくと、作り直しの手間が減ります。

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