Notebook (ノートブック)
Notebook は、Datadog のグラフと説明文を 1 つの文書に上から積み上げ、複数人で同時に編集できる調査用のドキュメント機能です。障害調査の途中経過やポストモーテムのように、見た数字とそのときの判断をひとまとめに残したい場面で使います。
概要
Notebook は、メトリクスやログのグラフと文章を上から順に並べ、調査の過程そのものを 1 本の文書として残すための機能です。ダッシュボードが「いつ見ても同じ指標が並ぶ常設の監視面」だとすれば、Notebook は「あの障害のとき何を見て何を疑ったか」を後から読み返せる記録にあたります。障害対応の当日は共同編集の作業ログとして使い、収束後はそのままポストモーテムの下書きになるため、調査と報告のあいだで情報を作り直す手間が減ります。
Notebook は文章とグラフを積み上げる調査の文書
Notebook は、Datadog の画面上で書く文書のなかに、ダッシュボードと同じグラフをそのまま埋め込める機能です。1 つの Notebook は、グラフ / 画像 / 見出し / 箇条書き / コードブロック / 引用文といった要素を上から積み上げて構成し、入力欄で / を打つと挿入できる要素の一覧が開きます。文字の装飾はリッチテキストの操作でも Markdown 記法の入力でも行えます (2026 年 9 月時点・出典: Notebooks)。見出しと埋め込みグラフからは目次が自動で組まれるため、長い調査でも後から読む人が知りたい箇所へ直接飛べます。ひとつ注意したいのは保存の挙動で、文章は自動保存される一方、埋め込んだグラフの設定変更はグラフエディター側での保存操作が必要です。
ダッシュボードとの違いは、機能ではなく寿命
ダッシュボードと Notebook は載せられるグラフがほぼ共通なので、どちらを使うべきか迷いがちです。分かれ目は寿命です。ダッシュボードは運用が続くかぎり手入れする常設の面、Notebook は 1 回の調査で書き切って閉じる記録で、価値は「そのとき何を見て何を疑ったか」が文章とグラフの並び順に残ることにあります。Notebook 内の全グラフは既定でヘッダーのグローバル時間枠に連動し、特定のグラフだけを連動から外して時間範囲を固定することもできます (2026 年 9 月時点)。障害が起きた時間帯のグラフを固定したうえで、比較用のグラフだけを可変にしておく、という読ませ方が作れます。
| 観点 | ダッシュボード | Notebook |
|---|---|---|
| 主な役目 | 毎日同じ指標を同じ配置で見張る | 1 件の調査で見た内容と判断を残す |
| 並べ方 | ウィジェットを自由な位置に配置 | 上から下へ読ませる 1 列の文書 |
| 文章の役割 | 補助 (注釈や手順の添え書き) | 主役 (グラフは主張の根拠) |
| 時間枠 | 面全体で切り替えて眺める | グローバル時間枠に連動 / 個別グラフは固定も可 |
| 使い終わり | 運用が続くかぎり更新 | 調査が終われば読み物として保管 |
効くのは時間が経つと再現できなくなる情報を扱う場面
障害対応の最中がまず一つです。ログの抽出結果とグラフを貼りながら気づいた順に書き足せば、それがそのまま時系列の作業ログになります。収束後のポストモーテムでも力を発揮し、テンプレートギャラリーには Incident Response のポストモーテム用テンプレートが用意されているため、白紙から様式を考えずに済みます。定例の報告にも向いています。Notebook には Postmortem / Runbook / Investigation / Documentation / Report という種別のタグと、最大 5 チームまで付けられるチームのタグがあります。どちらも目的別に後から探す手掛かりになります (2026 年 9 月時点・出典: Notebooks)。この置き場が無い運用では、調査の記録がチャットの流れと画像の貼り付けに散らばり、半年後に似た障害が起きたときに当時の判断を誰も再現できません。Notebook の実利は「調べ直す時間を次の担当者から取り上げないこと」にあります。
セルの種類とグラフの大きさと時間枠の既定値
セルの種類は、文章と見出し、箇条書き、コードブロック、引用、画像、そしてグラフです。グラフには メトリクスやログを扱うウィジェットがそのまま使え、Quick Edit でその場で条件を書き換えられます。表示サイズは XS / S / M (既定) / L / XL の 5 段で、XS と S では凡例が自動的に無効になります。テンプレート変数にも対応し、タグキーが team の変数はチームの選択欄として描画されます (2026 年 9 月時点)。よく使う期間は Set Default Time で既定として保存できるので、開いた人が毎回時間枠を合わせ直す手間が消えます。
共有と保全 - 誰が書き換えられて、いつまで読めるのか
同じ Notebook は複数人で同時に開いて書けます。上部には閲覧している人のアイコンが並び、他の人のカーソル位置もその場で見えます。ただし埋め込みグラフの編集は後から保存した内容が残る方式なので、同じグラフを 2 人で触ると片方の変更が消えます。歯車メニューのバージョン履歴から以前の状態を確認して復元や複製ができるため、取り返しは付きます。もう 1 つ知っておきたいのは読める期間で、時間範囲を固定したグラフは設定なしで自動的にスナップショット (静的な画像) が取られ、グラフ横のメニューから表示やダウンロードができます。保持期間を過ぎてもこの画像は残ります (2026 年 9 月時点)。半年前の障害の記録を開いてグラフが空だった、という事故が起きにくい設計です。
使い分けを誤ると何が起きるか
1 つ目のつまずきは、日々の監視を Notebook で回してしまうことです。文書は上から読ませる構造なので、異常を素早く見つける用途ではモニターとダッシュボードに勝てません。定着した指標はダッシュボードへ移し、Notebook は調べた記録に絞るほうが両方とも長持ちします。もう 1 つは、書きかけは自分だけのものだという思い込みです。権限は既定で全ユーザーがフルアクセスなので、途中の推測もそのまま他の人に見えます (2026 年 9 月時点)。共有前提で考えるのが窮屈なら、下書き用の Notebook を分けて、裏が取れた経過だけを本編に貼るとよいでしょう。