On-Call

モニターの通知を「今の当番の誰に、どの順で届けるか」に変える機能です。当番表 (スケジュール)、エスカレーションポリシー、呼び出し (ページ) を監視と同じ画面で回し、料金は呼び出しを受ける人数分のシートで決まります。

何ができるか

モニターやインシデント、セキュリティシグナルの通知を「ページ」という呼び出しに変え、チームごとの当番表 (スケジュール) とエスカレーションポリシーに沿って、プッシュ通知 / メール / SMS / 電話で担当者に届けます。応答が無ければ次の段へ上げ、モニターが復旧すればページも解決に戻します。

どのような場面で使うか

「アラートは Slack に流れているが、夜間に誰が見るかは決まっていない」状態を終わらせたいときに使います。当番を週替わりで回す、一次対応者が 5 分応答しなければ二次対応者へ上げる、緊急度の低い通知はメールだけにして眠りを妨げない、といった運用を Datadog の中だけで組めます。

身近な例え

マンション管理会社の緊急連絡網です。誰が今週の当番か、当番が数分出なければ次に誰へ回すか、電話で呼ぶかメールで済ませるかを 1 枚の紙に決めておき、住民からの通報 (モニターの通知) が来たらその網の順に呼び出していきます。連絡網が監視の画面と同じ場所にあるのが Datadog On-Call の特徴です。

結論 - 当番と呼び出しを監視と同じ画面で回し、人数で払う

監視の最後の工程は「誰に届くか」です。モニターが正しく鳴っても、届く先がチャンネル全員へのメンションなら、深夜には誰も起きません。Datadog On-Call はこの最後の工程を埋める機能で、通知が発生したときにチームへ「ページ」を送り、当番表とエスカレーションポリシーに沿って個人の電話やアプリまで届けます (2026 年 9 月時点・出典: On-Call)。モニターの設定画面と同じ場所で当番と呼び出しの規則を持てるので、「鳴る条件」と「届く先」を別のツールで二重管理する必要がなくなります。料金は監視対象の台数ではなく、呼び出しを受ける側の人数、つまりシート数で決まります。以下では部品を 1 つずつたどり、最後に「誰をシートに数えるか」と単価を確かめます。

5 つの概念はチームを中心に組み合わさる

公式ドキュメントが挙げる概念は 5 つで、中心にあるのはチームです。通知が発生すると、指定された On-Call チームへページが送られ、チームが持つエスカレーションポリシーとスケジュールに沿って人へ届きます (2026 年 9 月時点・出典: On-Call)。

On-Call の 5 つの概念 (2026 年 9 月時点)
概念役割例
ページ (Page)呼び出しの単位。状態は Triggered / Acknowledged / Resolved の 3 つモニター、インシデント、セキュリティシグナルからの通知
チーム (Team)ページを受ける組織単位。エスカレーションポリシーとスケジュールを所有する決済チーム、基盤チーム
ルーティングルール入ってきた通知の緊急度を決め、内容に応じて別のエスカレーションポリシーへ振り分ける。サポート時間を設けて時間外の上げ方を遅らせることもできる検証環境の通知は営業時間内だけ上げる
エスカレーションポリシーページをどの順で、誰へ上げていくかの規則一次当番 → 二次当番 → チーム全員
スケジュールいつ誰が当番かの時間表。時間帯や交代制を扱う週替わりの一次当番表
出典: On-Call の Concepts と How it works

この構造で覚えておくと楽なのは、人を直接呼ぶのではなく「チームを呼ぶ」という一段の抽象があることです。モニター側はチームの名前しか知らず、その先の当番や順番はチームの中で完結します。人事異動や当番の交代でモニターの設定を触る必要が無いのは、この一段のおかげです。

モニターからページへ繋ぐのは @oncall- のハンドル

モニターとの接続は 1 つの書式で済みます。チームのハンドルの前に oncall- を付けてメンションすると、そのチームへページが送られます。ハンドルが @checkout-operations のチームなら @oncall-checkout-operations です。この書式はモニターのほか、Incident Management、セキュリティ検出ルール、イベント管理など、@ メンションが使える場所ならどこでも効きます (2026 年 9 月時点・出典: Pages)。緊急度は、モニターから送る場合はチームのルーティングルールが動的緊急度を使うときにしきい値で決まり、手動や Slack から送ると常に high です。復旧と再通知の挙動も含めて表にまとめます (出典: 同上)。

ページの緊急度の決まり方と、モニター側の出来事に対する挙動 (2026 年 9 月時点)
出来事ページの挙動
モニターの ALERT しきい値超え (チームのルーティングルールが動的緊急度を使う場合)緊急度 high のページになる
モニターの WARN しきい値超え (同じ条件)緊急度 low のページになる
Datadog の画面からの手動送信、Slack の /datadog page からの送信常に緊急度 high
復旧 (復旧通知の本文にチームのメンションあり)自動で Resolved になる
復旧 (メンションが {{#is_alert}} の条件ブロックの中にしか無い)自動解決されない
再通知 (ページが解決済み)新しいページを作り、エスカレーションポリシーに流す
再通知 (ページが確認済み)確認時点の段からエスカレーションを再開する
再通知 (全段が終わっても未確認)最初の段からやり直す
出典: Pages (緊急度の決まり方、復旧、再通知の各記載)

通知文の構成はモニターの解説で扱っているので、ここでは「メンションを条件ブロックの外に置く」の 1 点だけ覚えてください。アラートが 1 回鳴っただけで終わらず、人が動くまで追いかける設計です。

エスカレーションポリシーは段と待ち時間と繰り返しで書く

エスカレーションポリシーは、ページが時間内に確認されなければ次の段へ上げる規則です。1 つの段で決めることは 3 つです。誰に通知するか (個人、チーム、またはスケジュール上の当番)、どう通知するか (Notify All か Round Robin)、次の段に上げるまで何分待つか、です。ポリシー全体では、誰も確認しないとき段を何回繰り返すか、全段と繰り返しを終えたあとページを自動で Resolved にするかを決めます (2026 年 9 月時点・出典: Escalation Policies)。

  • 段 1: スケジュール「一次当番」の当番者に通知 (Notify All) → 確認が無ければ次へ
  • 段 2: スケジュール「二次当番」の当番者と、個人 1 名に通知 → 確認が無ければ次へ
  • 段 3: チーム全員に通知
  • 繰り返し: 全段を終えても未確認なら、決めた回数だけ最初から
  • 終了: 繰り返しを終えたら自動で Resolved にするか、開いたままにするかを選ぶ
エスカレーションポリシーの組み立て (段の構成は例。決める項目の出典: Escalation Policies・2026 年 9 月時点)

Notify All は段の対象全員に同時に通知し、公式の例では個人 1 名と 3 名のチームとスケジュール 1 つを含む段なら 5 人に届きます。Round Robin は対象を順番に回す方式ですが、時間内に確認が無くても同じ段の次の人には行かず次の段へ上がるため、順番に回したいなら Round Robin の段を 1 つだけ置き、人数以上の回数を繰り返す設定にします (出典: 同上)。

呼び出しはどの経路で届き、誰が決めるか

ページが個人に届く経路は 4 つで、Datadog モバイルアプリのプッシュ通知、メール、SMS、電話です。SMS は固定電話や VoIP、仮想番号に対応せず、電話番号の対応は国で異なります (2026 年 9 月時点・出典: Notification Preferences)。受ける経路は管理者ではなく受け手本人が緊急度ごとに決めます。緊急度 high には即時のプッシュ通知と電話を主経路にすることが勧められ (公式の例はプッシュ通知 → 1 分後に電話 → 2 分後に再度プッシュ通知)、low はメールだけにして上げない設定もできます。何も設定していない人に high のページが来ると、メールが自動の受け皿になります (出典: 同上)。エスカレーションポリシーは「チームとして何分で次へ上げるか」、通知設定は「自分はどの経路で起こされたいか」を決めます。運用の約束と個人の事情を分けておくと当番表が長続きします。計画停止の時間帯はダウンタイムでモニターの通知を止めれば、ページも出ません。

PagerDuty を使っている組織はどう考えるか

すでに PagerDuty などの呼び出しツールを運用している組織にとって、On-Call は「もう 1 つ増える」のか「置き換える」のかが問題になります。公式ドキュメントが記載している事実は 2 つです。1 つは、On-Call チームを作るときに新規作成と既存の Datadog チームの追加に加えて、PagerDuty からチームの設定を取り込む選択肢があること。もう 1 つは、履歴を保存するためにページやエスカレーションポリシー、スケジュールの削除に対応しておらず、本番に影響を与えずに試すには試用の組織をサンドボックスとして作ることが案内されていることです (2026 年 9 月時点・出典: On-Call)。この 2 点から判断の筋道を引くと、次の順になります。

  • 1. 試用の組織を作り、PagerDuty からチーム設定を取り込んで当番表とポリシーの再現度を確かめる
  • 2. 再現できたチームから本番の組織へ移す。移行期間中は同じモニターから両方へ通知が出るため、チーム単位で「今週からこのチームの呼び出しは On-Call」と切り替える
  • 3. 外部ツールに残す通知は Webhook 等の既存経路のままにし、切り替え済みのチームだけ @oncall- のメンションへ置き換える
PagerDuty からの移行手順の例 (取り込みの選択肢と削除不可の記載の出典: On-Call・2026 年 9 月時点。手順の組み方は本記事の整理)

移行する動機として大きいのは、鳴ったモニター、当番、確認と解決の履歴が 1 つの画面に揃うことです。呼び出しツール側でページを確認してもモニターの画面には何も残らない、という断絶が消えます。

料金はシートの数で決まる - 誰を数えるか

On-Call はシート課金で、シートは「オンコールやインシデント対応に能動的に参加する利用者のライセンス」です。On-Call のシートが必要になるのは、スケジュールに入っている、エスカレーションポリシーに含まれている、ページを受けるための通知設定をしている、のいずれかを行う利用者です。既存のページやポリシー、チーム、スケジュールを見るだけならシートは要りません (2026 年 9 月時点・出典: Incident Response Billing)。

シート課金の構造 (SKU・課金単位・契約形態)
SKU課金単位契約形態含まれるもの注意点
On-Call 単独シート / 月年契約・月契約・オンデマンドの 3 列で単価が異なる当番、エスカレーション、ページ契約シート数を超えた分はオンデマンド単価で数えられる
Incident Response 一括シート / 月同じ 3 列の構造On-Call + Incident ManagementOn-Call と Incident Management の両方のシートを 1 つの SKU で持つ形
課金単位の出典: Datadog Pricing (具体的な単価は同ページを参照)。数え方: 請求期間中に同時に割り当てられていたシート数の最大値で、契約シート数を超えた分はオンデマンド単価。公式の例 = 契約 182 シートで月内ピーク 190 シートなら、182 が契約単価、8 がオンデマンド単価 (出典: Incident Response Billing)

数え方の要点は「最大同時割り当て数」です。利用者がシートを取得すると解除されるまで月ごとに課金が続き、月の途中で外した人の分もその月は請求対象に残ります (出典: 同上)。実務では「当番に入る人 + エスカレーションの最終段に入る人」がシート数の下限で、閲覧だけの人は数えません。料金全体の中での位置づけは料金体系の読み解きを参照してください。

設計の順序は「誰が受けるか」から

部品から始めると、スケジュールの交代制やルーティングルールの細部で止まります。順序を逆にして、答えるべき問いを 3 つ並べます。

  • 誰が受けるか: チームを 1 つ決め、一次当番のスケジュールに入る人を挙げる。その人数がシートの下限
  • いつ上げるか: 一次当番が何分応答しなければ二次へ上げるかを決め、エスカレーションポリシーの段と待ち時間に写す
  • 何を見て動くか: ページに繋ぐモニターを緊急度 high に値するものだけに絞り、残りは low かページ無しにする
設計の 3 つの問いと、対応する On-Call の部品

この 3 番目が最も効きます。ページに繋ぐモニターが多すぎると、当番は確認ボタンを押すだけの人になり、エスカレーションは「誰も本気で見ない通知」を上へ運ぶ装置になります。モニター側でアラート疲れを減らす手立てはそちらの解説にあるので、On-Call 側では「high に繋ぐのは人が今すぐ動く必要があるものだけ」という 1 行の規則を先に置いてください。3 つの問いに答えられたら、ルーティングルールは後回しで構いません。1 チーム、1 スケジュール、2 段のポリシー、high だけをページに繋ぐ最小構成で 1 ヶ月回し、確認までの時間と上がった回数を見てから広げるのが、当番表が長続きする順序です。

注意点

  • 本記事は 2026 年 9 月時点の公式ドキュメントの記載に基づいています。通知経路の対応国、ハンドルの書式、シートが必要になる操作の定義は変わり得るため、設定前に公式ドキュメントの記載を確認してください。
  • 本記事は課金の仕組みを解説するものです。具体的な単価や料金は Datadog 公式の料金ページで確認してください。
  • シート数は請求期間中の最大同時割り当て数で数えられ、月の途中で解除した利用者の分もその月は請求対象に残ります (2026 年 9 月時点)。当番表に入る人数を決めてから契約シート数を決めてください。
共有する