Datadog と Azure Monitor の比較 - 標準監視との住み分け
Azure を使っているなら Azure Monitor は既に手元にあります。それでも Datadog を足す理由はどこにあるのか。Azure Monitor の守備範囲と課金構造、Datadog が Azure をどう見るか、両方に払わない構成まで、双方の公式一次情報だけで住み分けの条件を整理します。
住み分けを決める 3 つの条件
結論から書きます。Azure Monitor と Datadog のどちらを主にするかは、監視対象の広がりと、見たい層の深さで決まります。Azure だけを使い、見たいのが Azure リソースの状態とアラートであれば、Azure Monitor で始めるのが自然です。監視対象が AWS やオンプレミスにも広がっている、あるいはアプリケーションの遅さをトレース / ログ / 実ユーザー体験まで 1 つの画面でつなげて追いたいなら、Datadog を足す価値が出ます。
- 条件 1: 監視対象は Azure だけか。Azure 以外 (AWS / オンプレミス / SaaS) が混じるなら横断できる側が主になる
- 条件 2: 見たい層はどこまでか。リソースの状態とアラートまでなら Azure Monitor、アプリの内部 (トレース / 実ユーザー) までなら Datadog
- 条件 3: 請求をどこに集めたいか。Azure の請求書に一本化したいなら Azure Monitor、監視費を独立して管理するなら Datadog
この 3 条件は本記事の以降の節にそれぞれ対応します。Azure Monitor の守備範囲、Datadog が Azure をどう見るか、そして課金構造の違いです。判断の型は CloudWatch との使い分けと同じですが、Azure Monitor には「既定で有効な機能は無料」という明文の特徴があり、その点を軸に読み進めてください。
Azure Monitor の守備範囲 - Metrics、Log Analytics、Application Insights
Azure Monitor は、公式の定義ではクラウドとハイブリッド環境のテレメトリを収集、分析、操作する Microsoft の統合可観測サービスで、メトリック、ログ、トレース、イベントを 1 つにまとめます (2026 年 9 月時点・出典: Azure Monitor の概要)。本記事では 3 つに分けて捉えます。1 つ目はリソース監視で、使っている Azure サービスの全リソースからログとメトリックを集めます。2 つ目はデータ基盤で、KQL で分析する Log Analytics ワークスペースと、Prometheus / OpenTelemetry のメトリックを PromQL で分析する Azure Monitor ワークスペースがあります。3 つ目が Application Insights で、公式は OpenTelemetry ベースの APM 機能と位置づけます。Datadog の比較相手は、リソース監視だけでなく APM とログ分析まで含むこの一式です。
Datadog は Azure をどこから見るのか
Datadog 側の入口は Azure インテグレーションです。対象サブスクリプションへの権限を持つアプリ登録 (App Registration) の認証情報を Datadog に設定すると、Datadog が API 経由でメトリクスとログを集めます。ログ転送は ARM テンプレートによる自動設定か Event Hub の手動構成です (2026 年 9 月時点・出典: Azure)。手順はインテグレーションへ。Azure 仮想マシンは Agent の有無に関わらず 1 台ずつホストとして課金され、Agent 入りの VM を統合が拾っても二重には数えません。App Service プランのノードもホストとして数えます。Azure SQL Database など他のリソースのメトリクス収集は月額課金に影響しません (2026 年 9 月時点・出典: Azure Integration Billing)。VM はタグで課金対象から外せますが、Agent の無い VM にだけ効きます。
課金構造はどこが違うか - 取り込み GB と保持 対 ホストと SKU
Azure Monitor は従量課金で、公式は「既定で有効になっている機能では料金は発生しない」と明記し、アクティビティログの収集とアラート、プラットフォームメトリックの収集と分析を例に挙げています。最大の費用項目は Log Analytics へのログ取り込みです (2026 年 9 月時点・出典: Azure Monitor のコストと使用量)。Datadog はホスト単価に SKU を積み上げる構造で、並べると次の表になります。
| 観点 | Azure Monitor | Datadog |
|---|---|---|
| 基本モデル | 従量課金。既定で有効な機能 (プラットフォームメトリック、アクティビティログ) は無料 | ホスト単価 (インフラ監視は Pro / Enterprise で単価が異なる) に製品別 SKU を積み上げ |
| ログ | 取り込み GB (10^9 バイト) と保持で課金。分析ログは 31 日の保持を追加費用なしで含む。コミットメント階層 (100 GB / 日から) は従量課金より単価が下がる | 取り込み GB あたり + 索引 100 万イベントあたり (保持日数で単価が変わる) |
| メトリクス | プラットフォームメトリックは無料。Prometheus マネージドサービスは取り込みサンプルとクエリで課金、18 か月保持は追加料金なし | 標準メトリクスはホスト単価に含む。カスタムメトリクスはホストあたりの割当を超えると課金 |
| アラート | アラートルールのシグナル種別と数、頻度、通知で課金 | モニターに単独の SKU は料金ページに無い |
| 単価の公開 | 料金ページの単価は地域と通貨で動的に表示 (本記事では数字を示さない) | 料金ページに USD の 3 列 (年契約 / 月契約 / オンデマンド) を静的に掲載 |
Azure は請求対象サイズを列の文字列表現から計算し、標準列を除外するため、公式は請求対象が受信データより平均約 25% 小さくなると説明しています。Datadog の索引はイベント数で数えるので、同じログを両者で見積もると GB と件数という別の物差しになります。SKU の積み上げ方は料金体系の読み解き方へ。本記事は課金の仕組みを解説するものです。具体的な単価や料金は各社の公式の料金ページで確認してください。
Azure Monitor が勝る点
同じ Azure の請求書に載る、という一点だけでも Azure Monitor を選ぶ理由になります。まず、追加導入なしで始まることです。プラットフォームメトリックとアクティビティログの収集は既定で有効かつ無料で、契約した時点で基本監視が動いています (2026 年 9 月時点・出典: Azure Monitor のコストと使用量)。次に網羅性です。全 Azure リソースからログとメトリックを集め、各サービスのポータル画面に統合され、専用の分析情報も付きます (出典: Azure Monitor の概要)。費用管理も Microsoft Cost Management + 請求の同じ画面で済みます。ログでも、コミットメント階層による従量課金比の割引、分析ログのクエリ無料、31 日保持込みが明文化されています (出典: Azure Monitor ログのコスト)。Azure 単一でリソース監視とアラートが主目的なら、Datadog が上乗せで勝てる部分は多くありません。
Datadog が活きる条件
Datadog が効くのは、Azure の外に監視対象があるか、アプリ層まで一体で見たいときです。1 つ目は横断性です。Azure のデータが AWS やオンプレミスの Agent のデータと同じタグ体系で並び、「env:prod のホスト全部」の 1 つの問いで複数クラウドを引けます。2 つ目は層の一体化です。APM、ログ管理、RUM が同じ画面にあり、実ユーザーの遅い画面からトレース、ログ、ホストまで 1 本の導線で降りられます。3 つ目は数え方の単純さで、Azure VM は Agent の有無に関わらず 1 台 1 ホストなので、Agent を入れても台数課金は変わりません (2026 年 9 月時点・出典: Azure Integration Billing)。これらの条件に 1 つも当たらない構成では、Datadog を足す費用対効果は薄いというのが率直な整理です。
二重に払わない構成と、CloudWatch 比較との違い
併用するなら、同じデータに両側で払わない線を先に引きます。
- 1. プラットフォームメトリックとアクティビティログは Azure 側で無料なので、Datadog に流しても Azure 側を止める必要はない
- 2. アプリケーションログは Log Analytics か Datadog のどちらか 1 か所に決める。両方に取り込むと GB の二重払いになる
- 3. APM は Application Insights か Datadog APM のどちらか。同じアプリに両方の計装を入れない
- 4. Azure VM には Agent を入れる。Datadog 側のホスト数は変わらず、取れる情報だけが増える
- 5. アラートは通知先が増えないよう、一次アラートをどちらで鳴らすかを決めて重複を消す
この記事の構図は CloudWatch との使い分けと似ていますが、違いも 2 つあります。1 つは、Azure Monitor が「既定機能は無料」を明文化しているため、リソース監視の土台を Azure 側に残す判断が費用面で迷いにくいこと。もう 1 つは、Datadog の Azure VM 課金が Agent の有無で変わらないため、Agent 導入の判断を課金と切り離して純粋に「中身を見たいか」で決められることです。導入するかどうかの規模別の目安は導入判断チェックリストに委ねます。